小児科専門医の子育て情報室 https://shounikai-kosodate-information.com 子育ては一人じゃない!一緒に子育てを楽しもう! Thu, 01 Jan 2026 12:08:10 +0000 ja hourly 1 今の離乳食のやり方。それで大丈夫? https://shounikai-kosodate-information.com/%e4%bb%8a%e3%81%ae%e9%9b%a2%e4%b9%b3%e9%a3%9f%e3%81%ae%e3%82%84%e3%82%8a%e6%96%b9%e3%80%82%e3%81%9d%e3%82%8c%e3%81%a7%e5%a4%a7%e4%b8%88%e5%a4%ab%ef%bc%9f/ https://shounikai-kosodate-information.com/%e4%bb%8a%e3%81%ae%e9%9b%a2%e4%b9%b3%e9%a3%9f%e3%81%ae%e3%82%84%e3%82%8a%e6%96%b9%e3%80%82%e3%81%9d%e3%82%8c%e3%81%a7%e5%a4%a7%e4%b8%88%e5%a4%ab%ef%bc%9f/#respond Thu, 01 Jan 2026 11:41:06 +0000 https://shounikai-kosodate-information.com/?p=45

産後まもなくから保健師さんの訪問や、3–4か月健診での保健指導があり、日本は「早い段階から親子を支える仕組み」が整っています。一方で、自治体によって離乳食の説明が少しずつ違い、6–7か月健診や9–10か月健診で小児科医が説明すると「保健師さんと違うけど、どっちが正しいの?」と混乱が起きることも珍しくありません。
毎日お世話をしながら情報を集めて、迷いながらも赤ちゃんのために頑張っているお母さん・お父さん、本当にお疲れさまです。特に「体重が増えない」「食べてくれない」は心配が尽きませんよね。ここでは、いまの栄養指導を“日本+海外の推奨”を踏まえて整理し、現実に続けやすい形に落とし込みます。

1. まず押さえる:離乳食は「練習」と「栄養」の両輪

離乳食は咀嚼(かむ)と嚥下(飲み込む)の練習であると同時に、栄養を満たして成長を支えるものです。3歳までの成長は栄養に依存しており、幼少期の栄養はその後の発達に関わります(鉄不足が認知機能に影響することも)。さらに、5歳までの成長に人種差はないとされ、海外の指針も参考になります。

2. 開始時期:目安は5〜6か月、「準備ができたサイン」を確認

諸外国を含め、離乳食開始は概ね5〜6か月で遅らせない。目安は

  • 首がすわっている
  • 口から押し出す反射が弱くなっている
  • 食事に興味がある
    このサインがそろった生後5か月以降に開始するのがよい考え方です。

3. “重湯・10倍粥スタート”にこだわりすぎない

日本では「10倍粥(あるいは重湯)から」という指導が多いですが、栄養学的観点で注意があります。母乳や乳児用ミルクは約65kcal/100mL、全粥(5倍粥)は約70kcal/100mLで同等。一方、10倍粥は約30kcal/100mLでエネルギーが少なめです。
窒息予防のため「小さく・柔らかく・必要ならピューレ」は大事。でも、重湯から“長く”続ける必要はありません。ミルクですでに水分の嚥下は練習済みなので、離乳食初期から「食べやすくした全粥程度まで早めに進めて栄養を取る」という考えが理にかないます。

4. 新しい食材:一つずつでOK、ただし“1週間あける”は要注意

「新しい食材は一つずつ」「数日は続けて様子を見る」は賛成です。けれど「新しい食材は1週間以上あける」を忠実に守ると、たんぱく質開始が遅れて必要な栄養が不足しやすくなります。
ポイントは、「一つずつ試しつつ、慣れの期間は並行して進める」こと。例えば、Aを試した翌日からAは続けつつ、Bを少量で追加、のように進められます。

5. 食事回数:1日1回に固定する医学的根拠は乏しい

「1日1回を7〜8か月まで維持」という指導もありますが、離乳食は経験で上達します。味に慣れるには複数回の“触れる機会”が必要なことも分かっています。日本だけでなく海外でも色々な味・食感・食品に慣れさせることが重要視されているため、赤ちゃんが嫌がる日は無理せず、離乳食初期から家族のリズムに合わせて早めに1日2〜3回の経験を積むほうがスムーズなことが多いです。

6. アレルギー:怖いから遅らせる、は今の医学と逆

重要な転換点です。卵・ピーナッツなどのアレルゲンは「遅らせる」より、離乳食開始後の早期に少量から摂取し、免疫寛容(体に慣れさせる)を促すのが現在の考え方です。もちろん大量に食べる必要はなく、少しずつ段階的に増やせば十分です(心配が強い場合は主治医と相談を)。

7. フォローアップミルク:切り替えが“正解”ではな

フォローアップミルクは鉄強化が特徴ですが、母乳栄養で離乳が進まず鉄欠乏を疑うなら、鉄剤(例:インクレミンシロップ®など医師管理下)が適しています。また、それ以外の栄養成分は乳児用ミルクに軍配が上がります。さらに各国指針では「フォローアップミルクは母乳の代用品ではない」とされ、切り替えで栄養不足が起こり得る点にも注意が促されています。つまり、乳児用ミルクを飲めている子を、積極的にフォローアップミルクへ変更する必要はありません。参考までに400mLあたりですが大まかな栄養成分の比較を示します。

8. 母乳はいつまで?やめ時に“正解”はない

「いつまで母乳を続けていいの?」はとても多い質問です。多くの指針は“やめる時期”を決めず、むしろ2歳以降も可能なら続けてよい、という立場です。母乳には赤ちゃん・お母さん双方にメリットがあります。
ただし、家庭の事情で早めにやめる選択も尊重されるべきです。医学的にAが望ましくても、暮らしの中で続けられなければ意味がありません。「医学的にはA、でもご家庭にはBでよい」—この視点こそ、毎日を回している親御さんに必要な“現実的な正解”です。

最後に

離乳食は、赤ちゃんの成長だけでなく、親の生活も大きく揺さぶります。体重が増えない不安、食べない焦り、情報がバラバラで疲れてしまう気持ち…どれも自然なことです。今日できた一口、座って食べられた数分、それだけでも立派な前進。どうかご自身を責めず、困ったら小児科や地域の専門職に頼ってくださいね。

  1. 「授乳・離乳の支援ガイド」改訂に関する研究会. “授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂)”厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257/pdf
  2. World Health Organization. WHO guideline for complementary feeding of infants and young children 6-23 months of age. 1st edition. Geneva: World Health Organization, 2023.
  3. Muth DN, et al. The clinician’s guide to pediatric nutrition. 1st edition. Washington DC: American Academy of Pediatrics, 2023.
  4. Fewtrell M, et al. Complementary Feeding: A Position Paper by the European Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition (ESPGHAN) Committee on Nutrition. J Pediatr Gastroenterol Nutr 2017; 64: 119-132.
  5. 早田茉莉, 他. 日本における離乳食・補完食指導の現状. 日本小児科学会雑誌, 2025; 129: 1266-1275.
  6. WHO Multicentre Growth Reference Study Group. WHO Child Growth Standards based on length/height, weight and age. Acta Paediatr Suppl, 2006; 450: 76-85
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ASDを疑ったらM-CHAT-RやPARS-TRを評価する https://shounikai-kosodate-information.com/asd%e3%82%92%e7%96%91%e3%81%a3%e3%81%9f%e3%82%89m-chat-r%e3%82%84pars-tr%e3%82%92%e8%a9%95%e4%be%a1%e3%81%99%e3%82%8b/ https://shounikai-kosodate-information.com/asd%e3%82%92%e7%96%91%e3%81%a3%e3%81%9f%e3%82%89m-chat-r%e3%82%84pars-tr%e3%82%92%e8%a9%95%e4%be%a1%e3%81%99%e3%82%8b/#respond Mon, 11 Aug 2025 13:24:25 +0000 https://shounikai-kosodate-information.com/?p=33

子どもが発達障害による行動特性をもっている場合に育児困難を感じやすい。親が子どもの発達に疑問をもって受診しようと思っても、数か月待ちがざらである。その間、親はSNSなどに溢れている(しばしば誤った)情報に曝され、自己嫌悪に陥ることでさらに育児困難を強くする。発達障害の中でも自閉スペクトラム症(ASD)は早期介入が予後を改善するため、早期に認知して適切な支援を行うことが重要である。M-CHAT-Rは1歳6か月から2歳程度を対象にASDのスクリーニングを行う検査であり、PARS-TRは幼児期から思春期まで幅広い年代で使用できる診断補助検査である。M-CHAT-RやPARS-TRを上手く活用するにはどうしたらよいか解説していく。

<M-CHAT-Rはどのような検査か?>

M-CHAT-RはDiana L. Robins、Deborah Fein、Marianne Bartonによって作成されたASDのスクリーニング検査である。原版は16か月から30か月の乳幼児を対象としているが、日本では1歳6か月(18か月)で健診があり、1歳6か月から2歳程度を対象に行うことが多い。ASDのスクリーニング以外に社会性の発達状況を把握するためにも用いられるため、2歳以上の幼児で実施する場合もある。

本検査は20の質問に養育者が答える質問形式で、不通過項目が3つ以上を陽性とする。定型発達の1歳6か月であればすべての項目を通過しているはずなので、陽性であれば社会性の発達になんらかの問題がある。改訂前のM-CHATによる診断率(陽性的中率)は17.8%との報告があり、スクリーニング陽性=ASDではなく、それ以外の基礎疾患が隠れている場合もある。また、M-CHAT陰性と判定され、のちにASDと診断された子は1.0%であり、不通過項目が2つ以下の場合は可能性が低いと言える。 ASDに関する詳細は別稿を参照していただきたいが、本検査の質問内容はASDを疑う徴候に関連している。

<M-CHAT-Rの解釈>

前述したように不通過項目が3つ以上を陽性とするが、本検査にはフォローアップ調査があり、陽性判定の1~2か月後に実施して追加情報を得る。不通過項目が2つ以下であっても、2歳未満であれば2歳以降に再度スクリーニングを行うが、ASDの可能性を示さなければ追加の処置は不要とされている。不通過項目が8つ以上など非常に多い場合は、早期介入を行うべく診断的評価を急ぐ。

<PARS-TRはどのような検査か?>

PARS-TRは養育者(基本的に親)に対して半構造化面接を行い、子育てが最も大変だった幼児期ピークと現在の二つの時間軸で評価する。幼児期ピークを振り返って評価することにより、ASD症状を丁寧に把握することができる。検査には多くの項目があるが、各項目に当てはまる症状の程度と頻度から3段階で評価する。養育者が覚えていない場合や評価する条件を満たさない項目は「評価不能」として扱う。

  •  0:まったく認められない
  •  1:ときどきみられる、あるいは多少ある
  •  2:たいていみられる、あるいはかなりある
  •  8:情報が得られなかった場合(評価不能)
  •  9:対象児が該当項目を評価する条件を満たさない場合(評価不能)

幼児期の項目と、現在の年齢帯の項目をそれぞれ評価して合計点からASDの可能性を判断する。この検査はあくまで養育者に対する面接法で点数化した補助検査であり、検査陽性=ASDの診断」ではない。しかし、本検査の質問内容はASDを疑う徴候に関連しているため大いに参考になる。

<PARS-TRでわかること>

本検査によって、得点からASDの可能性がわかるだけでなく、

  1. 行動症状の程度と頻度
  2. 症状に影響を与える場面条件

を把握することが可能であり、子どもへの支援を考える上で役に立つ。

PARS-TRの信頼性・妥当性については、表の通りである。感度は「本物をどれだけ拾い上げられるか」を表しており、特異度は「検査陰性ならどの程度ASDじゃないと言えるか」を表している。

 感度特異度
幼児期 9点をカットオフ89%94%
学童期 13点をカットオフ97%91%
思春期 20点をカットオフ81%86%

<参考文献>

神尾陽子. 小児内科, 2018; 50: 1399-1402.

大六一志. 発達障害研究, 2021; 43: 26-32.

Carbone, P.S, et al. Primary Care Autism Screening and Later Autism Diagnosis. Pediatrics, 2020; 146.

安達潤. 小児内科, 2018; 50: 1406-1409.

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