子どもが発達障害による行動特性をもっている場合に育児困難を感じやすい。親が子どもの発達に疑問をもって受診しようと思っても、数か月待ちがざらである。その間、親はSNSなどに溢れている(しばしば誤った)情報に曝され、自己嫌悪に陥ることでさらに育児困難を強くする。発達障害の中でも自閉スペクトラム症(ASD)は早期介入が予後を改善するため、早期に認知して適切な支援を行うことが重要である。M-CHAT-Rは1歳6か月から2歳程度を対象にASDのスクリーニングを行う検査であり、PARS-TRは幼児期から思春期まで幅広い年代で使用できる診断補助検査である。M-CHAT-RやPARS-TRを上手く活用するにはどうしたらよいか解説していく。
<M-CHAT-Rはどのような検査か?>
M-CHAT-RはDiana L. Robins、Deborah Fein、Marianne Bartonによって作成されたASDのスクリーニング検査である。原版は16か月から30か月の乳幼児を対象としているが、日本では1歳6か月(18か月)で健診があり、1歳6か月から2歳程度を対象に行うことが多い。ASDのスクリーニング以外に社会性の発達状況を把握するためにも用いられるため、2歳以上の幼児で実施する場合もある。
本検査は20の質問に養育者が答える質問形式で、不通過項目が3つ以上を陽性とする。定型発達の1歳6か月であればすべての項目を通過しているはずなので、陽性であれば社会性の発達になんらかの問題がある。改訂前のM-CHATによる診断率(陽性的中率)は17.8%との報告があり、スクリーニング陽性=ASDではなく、それ以外の基礎疾患が隠れている場合もある。また、M-CHAT陰性と判定され、のちにASDと診断された子は1.0%であり、不通過項目が2つ以下の場合は可能性が低いと言える。 ASDに関する詳細は別稿を参照していただきたいが、本検査の質問内容はASDを疑う徴候に関連している。
<M-CHAT-Rの解釈>
前述したように不通過項目が3つ以上を陽性とするが、本検査にはフォローアップ調査があり、陽性判定の1~2か月後に実施して追加情報を得る。不通過項目が2つ以下であっても、2歳未満であれば2歳以降に再度スクリーニングを行うが、ASDの可能性を示さなければ追加の処置は不要とされている。不通過項目が8つ以上など非常に多い場合は、早期介入を行うべく診断的評価を急ぐ。
<PARS-TRはどのような検査か?>
PARS-TRは養育者(基本的に親)に対して半構造化面接を行い、子育てが最も大変だった幼児期ピークと現在の二つの時間軸で評価する。幼児期ピークを振り返って評価することにより、ASD症状を丁寧に把握することができる。検査には多くの項目があるが、各項目に当てはまる症状の程度と頻度から3段階で評価する。養育者が覚えていない場合や評価する条件を満たさない項目は「評価不能」として扱う。
- 0:まったく認められない
- 1:ときどきみられる、あるいは多少ある
- 2:たいていみられる、あるいはかなりある
- 8:情報が得られなかった場合(評価不能)
- 9:対象児が該当項目を評価する条件を満たさない場合(評価不能)
幼児期の項目と、現在の年齢帯の項目をそれぞれ評価して合計点からASDの可能性を判断する。この検査はあくまで養育者に対する面接法で点数化した補助検査であり、検査陽性=ASDの診断」ではない。しかし、本検査の質問内容はASDを疑う徴候に関連しているため大いに参考になる。
<PARS-TRでわかること>
本検査によって、得点からASDの可能性がわかるだけでなく、
- 行動症状の程度と頻度
- 症状に影響を与える場面条件
を把握することが可能であり、子どもへの支援を考える上で役に立つ。
PARS-TRの信頼性・妥当性については、表の通りである。感度は「本物をどれだけ拾い上げられるか」を表しており、特異度は「検査陰性ならどの程度ASDじゃないと言えるか」を表している。
感度 | 特異度 | |
幼児期 9点をカットオフ | 89% | 94% |
学童期 13点をカットオフ | 97% | 91% |
思春期 20点をカットオフ | 81% | 86% |
<参考文献>
神尾陽子. 小児内科, 2018; 50: 1399-1402.
大六一志. 発達障害研究, 2021; 43: 26-32.
Carbone, P.S, et al. Primary Care Autism Screening and Later Autism Diagnosis. Pediatrics, 2020; 146.
安達潤. 小児内科, 2018; 50: 1406-1409.