今の離乳食のやり方。それで大丈夫?

産後まもなくから保健師さんの訪問や、3–4か月健診での保健指導があり、日本は「早い段階から親子を支える仕組み」が整っています。一方で、自治体によって離乳食の説明が少しずつ違い、6–7か月健診や9–10か月健診で小児科医が説明すると「保健師さんと違うけど、どっちが正しいの?」と混乱が起きることも珍しくありません。
毎日お世話をしながら情報を集めて、迷いながらも赤ちゃんのために頑張っているお母さん・お父さん、本当にお疲れさまです。特に「体重が増えない」「食べてくれない」は心配が尽きませんよね。ここでは、いまの栄養指導を“日本+海外の推奨”を踏まえて整理し、現実に続けやすい形に落とし込みます。

1. まず押さえる:離乳食は「練習」と「栄養」の両輪

離乳食は咀嚼(かむ)と嚥下(飲み込む)の練習であると同時に、栄養を満たして成長を支えるものです。3歳までの成長は栄養に依存しており、幼少期の栄養はその後の発達に関わります(鉄不足が認知機能に影響することも)。さらに、5歳までの成長に人種差はないとされ、海外の指針も参考になります。

2. 開始時期:目安は5〜6か月、「準備ができたサイン」を確認

諸外国を含め、離乳食開始は概ね5〜6か月で遅らせない。目安は

  • 首がすわっている
  • 口から押し出す反射が弱くなっている
  • 食事に興味がある
    このサインがそろった生後5か月以降に開始するのがよい考え方です。

3. “重湯・10倍粥スタート”にこだわりすぎない

日本では「10倍粥(あるいは重湯)から」という指導が多いですが、栄養学的観点で注意があります。母乳や乳児用ミルクは約65kcal/100mL、全粥(5倍粥)は約70kcal/100mLで同等。一方、10倍粥は約30kcal/100mLでエネルギーが少なめです。
窒息予防のため「小さく・柔らかく・必要ならピューレ」は大事。でも、重湯から“長く”続ける必要はありません。ミルクですでに水分の嚥下は練習済みなので、離乳食初期から「食べやすくした全粥程度まで早めに進めて栄養を取る」という考えが理にかないます。

4. 新しい食材:一つずつでOK、ただし“1週間あける”は要注意

「新しい食材は一つずつ」「数日は続けて様子を見る」は賛成です。けれど「新しい食材は1週間以上あける」を忠実に守ると、たんぱく質開始が遅れて必要な栄養が不足しやすくなります。
ポイントは、「一つずつ試しつつ、慣れの期間は並行して進める」こと。例えば、Aを試した翌日からAは続けつつ、Bを少量で追加、のように進められます。

5. 食事回数:1日1回に固定する医学的根拠は乏しい

「1日1回を7〜8か月まで維持」という指導もありますが、離乳食は経験で上達します。味に慣れるには複数回の“触れる機会”が必要なことも分かっています。日本だけでなく海外でも色々な味・食感・食品に慣れさせることが重要視されているため、赤ちゃんが嫌がる日は無理せず、離乳食初期から家族のリズムに合わせて早めに1日2〜3回の経験を積むほうがスムーズなことが多いです。

6. アレルギー:怖いから遅らせる、は今の医学と逆

重要な転換点です。卵・ピーナッツなどのアレルゲンは「遅らせる」より、離乳食開始後の早期に少量から摂取し、免疫寛容(体に慣れさせる)を促すのが現在の考え方です。もちろん大量に食べる必要はなく、少しずつ段階的に増やせば十分です(心配が強い場合は主治医と相談を)。

7. フォローアップミルク:切り替えが“正解”ではな

フォローアップミルクは鉄強化が特徴ですが、母乳栄養で離乳が進まず鉄欠乏を疑うなら、鉄剤(例:インクレミンシロップ®など医師管理下)が適しています。また、それ以外の栄養成分は乳児用ミルクに軍配が上がります。さらに各国指針では「フォローアップミルクは母乳の代用品ではない」とされ、切り替えで栄養不足が起こり得る点にも注意が促されています。つまり、乳児用ミルクを飲めている子を、積極的にフォローアップミルクへ変更する必要はありません。参考までに400mLあたりですが大まかな栄養成分の比較を示します。

8. 母乳はいつまで?やめ時に“正解”はない

「いつまで母乳を続けていいの?」はとても多い質問です。多くの指針は“やめる時期”を決めず、むしろ2歳以降も可能なら続けてよい、という立場です。母乳には赤ちゃん・お母さん双方にメリットがあります。
ただし、家庭の事情で早めにやめる選択も尊重されるべきです。医学的にAが望ましくても、暮らしの中で続けられなければ意味がありません。「医学的にはA、でもご家庭にはBでよい」—この視点こそ、毎日を回している親御さんに必要な“現実的な正解”です。

最後に

離乳食は、赤ちゃんの成長だけでなく、親の生活も大きく揺さぶります。体重が増えない不安、食べない焦り、情報がバラバラで疲れてしまう気持ち…どれも自然なことです。今日できた一口、座って食べられた数分、それだけでも立派な前進。どうかご自身を責めず、困ったら小児科や地域の専門職に頼ってくださいね。

  1. 「授乳・離乳の支援ガイド」改訂に関する研究会. “授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂)”厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257/pdf
  2. World Health Organization. WHO guideline for complementary feeding of infants and young children 6-23 months of age. 1st edition. Geneva: World Health Organization, 2023.
  3. Muth DN, et al. The clinician’s guide to pediatric nutrition. 1st edition. Washington DC: American Academy of Pediatrics, 2023.
  4. Fewtrell M, et al. Complementary Feeding: A Position Paper by the European Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition (ESPGHAN) Committee on Nutrition. J Pediatr Gastroenterol Nutr 2017; 64: 119-132.
  5. 早田茉莉, 他. 日本における離乳食・補完食指導の現状. 日本小児科学会雑誌, 2025; 129: 1266-1275.
  6. WHO Multicentre Growth Reference Study Group. WHO Child Growth Standards based on length/height, weight and age. Acta Paediatr Suppl, 2006; 450: 76-85

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